林住期日記・・・北の森から(準備中)

『私が森に行って暮そうと心に決めたのは、暮らしを作るもとの事実と真正面から向き合いたいと心から望んだからでした。生きるのに大切な事実だけに目を向け、死ぬ時に実は本当は生きていなかったと知ることのないように。暮らしが私にもたらすものからしっかり学び取りたかったのです。私は、暮らしとはいえない暮らしを生きたいとは思いません。私は今を生きたいのです。 』 (ソロー『ウォールデン 森の生活』 今泉吉晴/訳 ) 

2018年09月

今日は朝からしっかりとした雨。
地震被害の大きかった地域では厳しいだろう。

昨日、隣町のやや大きなスーパーに買い物に行ってみたが、
やはり野菜や生ものの棚はガラガラ。
豆腐や納豆もまだ並んでいない。
物流の回復はまだまだ十分ではないようだ。
  *  *  *

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北海道に来て意外に思ったのは、クワガタが多いこと。
関西よりも見かける頻度が多いように思う。
まあ、自然が豊かなので当たり前なのかもしれないが、
クワガタ=猛暑のイメージを持つ関西人にとって、
冷涼な北海道にクワガタがいるのが不思議に感じられるのだろう。

少年時代、京都ではクワガタのことを「ゲンジ」と呼んでいた。
夏休みには、早朝、友達と近所の雑木林に「ゲンジとり」によく出かけた。
全身蚊に刺されながらも、とれたのは1匹か2匹、ボーズの時もあった。

こちらでは、クワガタが勝手に庭に来てくれる。
写真のように白樺の木にとまっていることもある。
よく見かけるのは、ミヤマクワガタ。
ミヤマクワガタのことを京都の少年たちは「ヘイタイ」と呼んでいた。
ノコギリクワガタは「キソ」と呼ばれた。
いわれはわからない。
少年たちの間では「ヘイタイ」より「キソ」の方が格が上であった。
ここへ来てまだ「キソ」は見かけない。
写真には撮っていないがコクワガタも割と見かける。
コクワガタは「ペタ」と呼ばれた。
「ペタ」は「ヘイタイ」以上にポピュラーで
少年たちの間では雑魚扱いされていた。

雑木林の王者、カブトムシは北海道では生息していない…
はずだったが、最近は本土からの「外来種」が持ち込まれ、
野生化しているようである。
幸いここではまだ見かけていない。
ネイティブなクワガタたちの存在を脅かして欲しくない。

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今の季節、散歩をしていると道端に様々な花が咲いている。
いわゆる雑草の花なのだが、北海道の雑草はとても可憐な気がする。
「雑草という名前の植物はない」とさるお方がおっしゃったそうだが、
まあそれはさておき、
本州の雑草はいかにも雑草なのに、北海道の雑草はなぜか一味違う。
気候の違いなのだろう。

その道端に咲く野草の花を散歩中に摘んで、
小さな一輪挿しに適当に差し込んでみた。
これが案外いい。
2,3日でしおれるが、
代わりの花はいくらでも摘むことができる。
なかなかいい趣味を見つけた。

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停電はしているものの水とガスは使える。
しかし停電がいつ復旧するのか誰もはっきりと言わない。
ラジオで経産大臣が「少なくとも一週間」とか言い出した時にはさすがに不安になった。
そこまで長く電気が停まると水もいつか停まるのでは、
スマホの基地局もダウンするのでは、といろいろ心配になる。

ライト用の予備電池がない。
庭の畑で、ある程度の葉物野菜は栽培しているし、ジャガイモも収穫可能。
しかし肝心の米が残り少ない。
冷蔵庫が使えないので、生ものはもたない。
タンパク質がない。
となれば買い出しに行くしかないが、
みんな商店に殺到しパニックになっているのでは?
というか、店はやっているのだろうか?
停電なので照明もなくレジも使えないはず。
そもそも信号が消えた道路を走れるのだろうか?

初めての経験で不安がつのるなか、とりあえず車で街に出てみた。

地震当日の正午前。
道路は意外と空いている。
信号は消えているが大きな交差点では警察官が立って手信号をしていた。
これでひとまずホッとするが、小さな交差点は自己判断でそろっと通過しなければならない。

コンビニには何台か車が停まっていた。
店の中は暗いが営業しているようだ。
商品はかなり少ないがスタッフは意外と多い。
総出で対応という感じを受ける。
お目当ての電池は売り切れており、ラーメンや缶詰もほとんどない。
とりあえず残っていたカップスープ類や菓子などを買う。
レジはもちろん使えず、電卓で対応してくれた。
店のオーナーぽい人がヘッドランプをつけて奥の倉庫で奮闘していた。
品出しする前に値札をつけているのだろうか。

次に、すぐ隣の大手チェーン店のホームセンターに行く。
ここは閉まっていると思っていたのだが開いていて、入り口にお客さんが並んでいた。
隣接する函館市の一部では断水しており給水用のポリタンクを買いに来ている人もいた。
ここもレジではバーコードが読めない。
そのため、値札のついていない商品をそのままレジに持って行っても対応できない。
ということで、一人ひとりの客に店の人がついて店内を回り、客が手にした商品にその都度値札を貼るというアナログな作業をしていた。
実に非合理的なやり方だが、あらかじめすべての商品に値札を貼っておくということができていない以上、これしか方法がないようだ。
デジタル社会がいきなりアナログにもどったのだから、時間も相当かかる。
お客さんは辛抱強く待っていた。
「これも経験だねえ」とか「初めてのことだからねえ」とかの声が聞こえる。
ここで電池や袋ラーメンをゲットする。
レジの横には「釣銭が切れたら営業終了します」と書かれていた。

次に、町では人気のある食料品店に行く。
こじんまりした家庭的なミニスーパー。
ここもスタッフ総出の感じ。
商品は比較的潤沢にある。
野菜や生ものも売っているが、冷蔵庫がいつ使えるかわからないので買うことができない。
多くの商品にはすでに値札が貼られている。
米や缶詰、レトルトや乾物、ペットボトル飲料等を購入。
レジではやはり電卓で対応。
値札がついていないものはレジの人が「これいくらー?」と叫ぶと、店内のスタッフが陳列棚を見て「〇〇円!」と答える。
すばらしいシステム!
さきほどの大手ホームセンターでは採用できないシステムであった。

今日、電気が復旧してからテレビのニュースを見ていると、
都会ではホームセンター数時間待ちとか、混乱した様子が報道されていた。
この小さな町ではそんなこともなく、みんな辛抱強く不便を受け入れているように感じた。
もちろん目に見えないところで奮闘している人がいてのことであろうが。
「これも経験」…ほっとする言葉だった。

もっともっと大変な思いをされている被災者の方々がおられると思います。
改めてお見舞い申し上げます。

スマホの明かりを頼りにアウトドア用のヘッドランプとランタンを探し出したことは前の記事で書いた。

実はその前に玄関の靴箱の中にいわゆる防災用の赤い懐中電灯があるのがわかっていたので、それも手にしたがすぐに使えないとわかった。
この手の懐中電灯は、移動の際に行く手を照らす道具としては役に立つ。
ただし、移動先で何かの動作をするときには極めて不便である。
例えばこれをもってトイレに行ったとして、トイレで用を足す際にはこれをどこかへ置かなければならない。しかし、どこにおいてもうまくトイレ全体を照らしてはくれないのである。
その点、アウトドア用のライトはうまくできている。
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キャンプ道具箱から引っ張り出したのはこの3種のライト。
大きめのランタンとミニランタン、そしてヘッドランプ。
すべて単三電池で作動するLED式のものである。
この手のものに使う電池は統一しておく方がいい。

大きめのランタンは、部屋全体をほんのり照らしてくれる。
これだけでずいぶんと安心感を得られる。
それ以上の明るさは求めてはいけない。
大事なことはいかに電池を長持ちさせるかである。

ヘッドランプは最強である。
これがあれば暗闇のなかでもほぼすべての日常動作ができる。
両手がフリーで、視線の先を必ず照らしてくれるからである。
登山やキャンプの時には絶対に忘れてはいけない。

そして今回意外にすぐれものだと感じたのがミニランタン。
ヘッドランプは優れているが、あくまでスポットライトである。
ある一点を照らして作業するのは適しているが、
例えば先述のトイレに行く時とかにはなんとなく不便である。
ミニランタンを首からぶら下げると自分の周りをほのかな明かりで包んでくれる。
トイレに行けばトイレ全体がほのかに明るくなる。
しかも両手はフリーである。
アウトドアではなく、停電時の家の中ではいちばん優れたライトだと思った。
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ちなみにこれはモンベルのミニランタンです。




当地では停電は7日未明に復旧しました。
皆様ご心配をおかけしましたが、まずは一安心です。
今回の地震の体験、とりあえず忘備録を兼ねて記事にしておきます。
   *  *  *

9月6日未明、枕元に置いていたスマホの警報で目が覚めた。
警報は「地震に注意!」と連呼するが、揺れはない。
遠方の地震なんだろうかとぼんやりしているとグラっときた。
最初はじんわり、しかしだんだんと激しい揺れになる。
それがかなり長く続いた。
京都で阪神大震災を経験したが、その時よりも長く感じた。

揺れがおさまってテレビで速報を見る。最大震度6強。
震源地は胆振地方、噴火湾を隔てているが直線距離だと割と近い。
すぐに心配したのは津波だが、その心配はないという。
しばらくしてやや大きな余震。
そのあと突然停電して真っ暗になった。
わずかな明かりもなく本当に真っ暗だった。
スマホのライトをつければいいと気づくまで少し時間がかかった。
この時、もし手元にスマホがなかったらと思うとぞっとする。

スマホのあかりを頼りにキャンプ用品のライト類を探し出した。
ランタンとヘッドランプを見つけ出し、それからあるものを探しにかかった。
探していたのはこれである。
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ソニーの「ミリバール」というアウトドアに特化した携帯ラジオ。
買ったのはもう30年以上前だろうか?
いまや「ミリバール」という言葉も使わない。
今でいう「ヘクトパスカル」である。
スイッチひとつで「日本短波放送第一」(NSB1)が聴ける。
この放送局はリアルタイムで気圧配置を読み上げてくれる。
船舶や登山者はそれを記録し自ら実況天気図を作成できた。
裏面にはそのための緯度経度入りの日本地図が書かれている。
バイクツーリングやキャンプの時には必ず持ってでかけた。
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いまや日本短波放送もラジオNIKKEIと名前も変わり、
その存在を知る人も少ない。
このラジオは中波の受信性能もなかなかのものだった。
しかも単三電池2本でかなり長時間受信できた。
実は阪神大震災の時もこのラジオを持って職場に出勤した。

これを部屋の片隅から探し出し、新品の電池を入れた。
電池カバーはゆるくなっていて、ガムテで押さえなければならなかった。
スイッチを入れ、一番強く入るNHKの地元局の周波数に合わせた。
それからこのラジオは暗闇のなか地震の情報を伝え続けてくれた。

いまや電池で動く携帯ラジオを持っている人は少ないのではないか?
若い人はスマホにラジオアプリを入れており、それでたまにラジオを聴いているようだ。
スマホは災害時にはもっとも有効な連絡手段になる。
停電時、スマホのバッテリー消費は極力少なくしたい。
そう思うとスマホでラジオを聴くのはやめた方がいい。
災害時に必要なのは、雑音なく安定して受信できる感度を持ったシンプルな電池式ラジオ。
極端な話、最寄りのNHKだけ受信できればいい。電池だけは長持ちして欲しい。

こうしたラジオを持っておく必要性をもっとアピールしたほうがいい。
しかし、いまやそのようなラジオが売っているのだろうか?
この「ミリバール」もずいぶん前に製造終了となっている。

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